教えてビアスタイル!「ベルジャンホワイト」の魅力や歴史を深掘り!

2025年11月6日0

はじめに

ビールにはビアスタイルというものがあり、サブスタイルやバリエーションを含めると、正確な数を特定することは難しいものの、150種類以上のビアスタイルがあると言われています。
日本では法律の関係で大手企業がつくるビールとの接点しかなかったこともあり、多くの日本人が知っているのはそのうちのひと握りの「ピルスナー」というビアスタイルだけでしたが、最近はクラフトビールの人気もあって他のビアスタイルの認知が進んでいます。
(ピルスナーは喉越しや透明感、大量生産に向いているなどの特徴があり、かつて世界の主流に躍り出るような時期がありました)


上の図のような感じで、世界にはさまざまなビアスタイルが存在しており、大きく「上面発酵のエール(ALE)」と「下面発酵のラガー(LAGER)」に分類されます。(※上記の図は、そのごく一部を示しています)

エール系のビールは、古くからの醸造手法に近く、クリエイティブなクラフトビールなどが生まれやすい傾向があります。ただし、大量生産にはあまり適していないという特徴もあります。

一方、ラガー系のビールは低温で発酵させることができ、大量生産に適しているという特性があります。世界的に普及したピルスナーも、ラガー系のビールに分類されます。

また、「ラガー=熱処理されたビール」と誤解している方もいますが、それは正しくありません。
エール系もラガー系も、それぞれに個性と魅力があります。

今回登場する「ベルジャンホワイトビール」は、ビアスタイルの一種で、主にベルギーで醸造される上面発酵の白ビールの事です。その特徴的な味わいと歴史的な背景から多くの人に愛されています。この記事では、ベルジャンホワイトについて詳しく掘り下げ、初心者からビールマニアの人まで楽しんでいただけるように、その魅力を深掘りしてみたいと思います。

 

ベルジャンホワイトとは何か?

ベルジャン(Belgian)は直訳すると「ベルギーの」という意味です。ベルジャンホワイト(Belgian White)は、ベルギーの伝統的なビアスタイルの一つでその魅力的な白い色合いから名前が付けられました。また、現地ではウィットビア(witbier)と呼ばれることが一般的で、「wit」とはベルギーで話されるオランダ語(フラマン語)で「白」という意味になります。なぜベルギーでオランダ語?と思うかもしれませんが、ベルギーの公用語は「オランダ語」「フランス語」「ドイツ語」の3つになるそうで、地図を見れば納得。ベルギーはこれら3カ国に隣接しています。

一般的に明るく濁った外観、柔らかい口当たり、味わいは軽快で少し甘味がありさわやかで、オレンジピール(オレンジの果皮)やコリアンダーシード(パクチーの種子)などのスパイスが感じられます。
通常、ビールは大麦が使われることが多いですが、ベルジャンホワイトは小麦が主成分であり、麦芽の他にスパイスや柑橘類の風味が加えられます。この組み合わせがベルジャンホワイトの独自の味わいを形成しており、初心者からビール愛好家まで幅広く支持される理由の一つです。

以下に、ベルジャンホワイトの主な特徴をいくつか挙げてみたいと思います。

1:小麦のビール
ベルジャンホワイトは、通常、小麦(特に未発芽小麦)を主成分としているため、濁りのある外観とクリーミーな質感があります。

2:スパイスの使用
ベルジャンホワイトには、コリアンダーシードやオレンジピールなどのスパイスが使用されます。これにより、独特の風味とアロマが生まれます。

3:酵母
ベルジャンホワイトは、特定の種類のベルギー酵母を使用して発酵させられます。これがビールに独特の酵母の風味と複雑さをもたらします。上面発酵で醸造されます。

4:低めのアルコール度数
一般的に、ベルジャンホワイトは比較的低いアルコール度数(通常は4%〜5%程度)を持っており、軽快で飲みやすいビールとされています。

5:フルーティーな風味
スパイスと酵母の相互作用により、ベルジャンホワイトは柑橘類の風味やフルーティーなニュアンスを持っています。オレンジやレモンの香りや味わいが感じられることがあります。

6:グラスとサーブ
通常、ベルジャンホワイトは特定のグラスで提供されることが多く、オレンジスライスやレモンスライスを飲み物に浮かべて提供されることがあります。

 

歴史的な背景

【ベルジャンホワイトの起源】

ベルジャンホワイトの歴史については複数の説が存在し、正確な起源についての統一的な見解は得られていません。

ただ、Hoegaarden(ヒューガルデン)地域におけるビール醸造の歴史は非常に古く、村の歴史では1300年代の初頭にはビールをつくっていた話が出てくるそうです。1500年代にはギルド(Guild)と呼ばれる醸造家の組織が生まれ、メンバーの多くは農家で自家栽培の小麦などを使ってビールを作っていたようです。その後、1800年代になると30以上の醸造所があったそうです。

ただ、この時代の詳細な文献や証拠が乏しいため、確証を持って語ることは難しい状態となっています。

 

【ベルジャンホワイトの衰退と復活】

ベルジャンホワイトの歴史の中で、一時期は他のビアスタイルの影に隠れる形で衰退しました。20世紀に入り、大量生産と大量販売のマーケティングでピルスナータイプのスタイルが人気となったためです。また、第一次世界大戦と第二次世界大戦もビール産業に影響を与え、醸造所の多くが閉鎖されたり縮小したりしました。

そして、1957年にはベルジャンホワイトをつくる醸造所はなんと「ゼロ」になりました。

その数年後、ベルジャンホワイトが無くなったことを惜しむ声が聞こえる中、ピエール・セリス(Pierre Celis)という人がベルジャンホワイトの復活に大きな役割を果たしました。

ピエール・セリスは廃業した醸造所から設備一式をもらってきて、「デ・クライス(修道院)」という名前の醸造所を作ります(後のヒューガルデン醸造所)。村の伝統を守り、ベルジャンホワイトの製造を再開しました。

ピエール・セリスの努力により、ヴェルジャンホワイトは復活し、多くのビール愛好家から支持を受けました。

ピエール・セリスの貢献は、ベルジャンホワイトスタイルのビールを世界に広め、ヒューガルデンブランドの成功に大きく貢献しました。セリスの名前は、ベルギービール産業における重要な一部となり、彼の功績はビール愛好家にとって尊敬されています。

その後、多くの醸造所がこのスタイルを醸造し、ベルギービール文化において欠かせない存在となりました。

ただ、ピエール・セリスさんの人生は波瀾万丈です。そちらはまた改めて別の記事で掲載したいと思います。
(この部分に後日ピエール・セリスさんに関する記事のリンクを記載いたします)

 

ベルジャンホワイトの人気

ベルジャンホワイトは世界中で人気ですが、その理由は下記のようなものが考えられます。

1:独自の風味と複雑性
ベルジャンホワイトは、スパイスやオレンジピール、ベルギー酵母の風味と相まって、独自の複雑な味わいを持っています。これにより、ビール愛好家は常に新しい味わいを楽しむことができます。ベルギービールの伝統的な風味は、他のビールスタイルとは一線を画すものであり、探求心を刺激します。

2:飲みやすさ
ベルジャンホワイトは、一般的に低いアルコール度数を持っており、優しく軽快で飲みやすい性質があります。これは、ビール初心者からビール愛好家まで、幅広い層の人々に受け入れられています。特にビールに苦手意識があった女性でも飲むことができて、そこからビールの世界への門が開き、今ではどんなビールでも飲めるようになったという話も時々あります。

3:季節感とマッチング
ベルジャンホワイトは、特に夏季や暑い日に人気があります。そのさわやかな風味と柑橘系の特徴は、暑い季節に最適で、多くの人がビーチや屋外で楽しむことができるビールとして評価されています。

4:グルメペアリング
ベルジャンホワイトの風味は、多くの食事と組み合わせやすく、料理の相性が良いとされています。特にシーフード、サラダ、軽食、チーズなどとの相性が抜群で、食事との組み合わせが楽しめることから、食通たちにも支持されています。

5:ビール文化への尊重
ベルギービールはその長い歴史と豊かな伝統に根ざしており、ベルジャンホワイトもその一部です。ビール醸造に対する真摯な姿勢や、地域性を尊重した醸造プロセスが、多くの人々に愛される要因となっています。

総括すると、ベルジャンホワイトは独自の風味、飲みやすさ、季節感、食事との相性、そしてビール文化への尊重が組み合わさって、世界中で高い人気を持つビールスタイルと言えます。その多様性と魅力は、多くのビール愛好家にとって魅力的であり、常に新しい発見を楽しむことができる楽しい選択肢となっています。

 

ベルジャンホワイトの飲み方

ビールの飲み方に決まりはないので、好きに飲むのが1番です!

ただ、より風味を楽しむためのおすすめの飲み方みたいなものもあるようです。

まず、ビールを注ぐ際には、グラスの中央に向かって注ぎ、泡を適度に立てることが重要。ビールの温度も大切で、通常は5〜7度の範囲が最適とされているようです。これにより、ビールの風味が最大限に引き立てられます。冷やしすぎず、適切な温度で提供することで、ベルジャンホワイトの爽やかな風味が際立ちます。

また、ベルジャンホワイトは非常に飲みやすいビールのため、軽食や軽い料理との相性が抜群です。シーフード、サラダ、チーズ、軽いパスタなど、軽食との組み合わせが特におすすめです。ベルジャンホワイトの風味と香りは、これらの料理との相性が良く、食事をより楽しいものにしてくれます。

さらに、ベルジャンホワイトは辛い料理やスパイシーな料理とも相性が良いとされています。辛さとスパイスの効いた料理との対比で、ビールの爽やかさが引き立ち、口の中で絶妙なバランスを生み出しますカレーやタコス、シシトウなどのスパイシーな料理と組み合わせて楽しんでください。

 

ベルジャンホワイトの製造過程

以下は、ベルジャンホワイトの一般的な製造過程の概要です。

1:麦汁の作成(糖化・ろ過)
小麦と大麦麦芽を主原料として糖化し、麦汁を作成します。小麦を多く使用することで、特有の白濁した外観と柔らかい口当たりが生まれます。

2:煮沸とスパイスの添加
麦汁を煮沸し、苦味付けのために少量のホップを加えます。煮沸の終盤、または発酵前の段階で、コリアンダーシードやオレンジピールなどのスパイス・柑橘皮を加え、香り付けを行います。これによりベルジャンホワイト特有の華やかなアロマが生まれます。

3:発酵
ベルジャンホワイト専用のエール酵母を添加し、温度管理のもとで発酵を行います。酵母が糖を分解してアルコールと炭酸ガスを生成し、同時にバナナやクローブ、柑橘を思わせる複雑な香味成分(エステル類)を形成します。

4:熟成・瓶内二次発酵
一次発酵後、ビールは熟成期間を経て瓶詰めされる際に、酵母と糖を少量加えて瓶内二次発酵を行うことがあります。これにより自然な炭酸が生まれ、泡立ちがきめ細かくなり、風味もより深まります。

5:冷却・安定化
熟成後、ビールは冷却され、酵母や不純物を沈殿させて安定化します。その後、適切な温度管理のもとで提供され、爽やかな飲み口と豊かな香りを楽しめる状態となります。

 

この製造プロセスにより、ベルジャンホワイトはその特有の風味と質を持つビールとして生まれます。伝統的な製法とモダンなアプローチの組み合わせにより、独自のビールとして提供されます。

 

ベルジャンホワイトのブランドと銘柄

ベルジャンホワイトビールは、さまざまなブランドから提供されており、各ブランドは独自の特徴を持っています。以下は、いくつかの有名なベルジャンホワイトのブランドと銘柄についての詳細です。


※画像はイメージです


ヒューガルデン (Hoegaarden)

ベルジャンホワイトビールの代表的なブランドで、その独自の風味と魅力的な白い色合いが特徴です。ベルギー発祥のホワイトビールであり、世界中で広く楽しまれています。ピエール・セリスによって復活しました。

セリスホワイト(Celis White)
ピエール・セリスによって醸造されたベルジャンホワイトビールです。ピエール・セリスはヒューガルデンの復活後にアメリアテキサス州に渡ってセリスブリュワリー(Celis Brewery)を設立し、セリスホワイトを製造しました。このビールは、ベルジャンホワイトビールのスタイルをアメリカで再興させる試みであり、1980年代にアメリカ市場で評価を受けました。オレンジピールとスパイスの風味が豊かで、クリアな黄色い色調が特徴です。

ブリュースター(Blanche de Bruxelles)
ベルギーのブリュッセルで生産されるブリュースターは、フルーティーな香りと爽やかな味わいがあり、伝統的なベルジャンホワイトビールのスタイルを忠実に守っています。

ブルームーン(Blue Moon)
ブルームーンは、アメリカのブルワリーで製造されており、アメリカ国内で非常に人気のあるベルジャンホワイトビールです。柑橘類の風味と滑らかな口当たりが特徴です。

 

これらは、ベルジャンホワイトビールの一部を代表するブランドと銘柄です。各ブランドは独自の風味と特徴を持っており、ビール愛好家に多彩な選択肢を提供しています。

 

ベルジャンホワイトとヴァイツェンの違い

ベルジャンホワイトとヴァイツェンは、どちらもホワイトビール(白ビール)の一種で、非常に風味豊かなビールスタイルですがいまいちその違いがわからない人も多いと思いますので解説させていただきます。

  1. 発祥地の違い:
    • ベルジャンホワイト: ベルジャンホワイトは、ベルギーが発祥地で、ベルギースタイルの白ビールとして知られています。
    • ヴァイツェン: ヴァイツェンは、ドイツが発祥地で、バイエルン地方などで特に有名です。
  2. 酵母の違い:
    • ベルジャンホワイト: ベルジャンホワイトには、ベルギーのエール酵母が通常使用されます。この酵母はフルーティでスパイシーな風味をもたらし、複雑な香りを生み出します。
    • ヴァイツェン: ヴァイツェンでは、バイエルンヴァイツェンの場合、特定の酵母株(Saccharomyces cerevisiae var. weissbier)が使用されます。これはバナナやクローブのような特徴的なフルーツとスパイスの風味を生み出します。
  3. 原材料の違い:
    • ベルジャンホワイト: ベルジャンホワイトには通常、小麦・大麦・オレンジピール・コリアンダーシードなどが使用されます。これらのスパイスがユニークな風味を提供します。
    • ヴァイツェン: ヴァイツェンにも小麦と大麦が使用されますが、一般的にベルジャンホワイトよりも小麦の割合が高く、これがクリーミーな口当たりを生み出します。また、ヴァイツェンにもスパイスが加えられることがありますが、種類や量はビール醸造所によって異なります。
  4. 風味の違い:
    • ベルジャンホワイト: ベルジャンホワイトは一般的にフルーティで、コリアンダーシードのスパイスの風味が特徴です。スパイシーで複雑ながらも軽やかな味わいがあります。
    • ヴァイツェン: ヴァイツェンはバナナのようなフルーツの香りが特徴的です。口当たりはクリーミーです。

 

まとめ

ベルジャンホワイトビールは、その特有の風味と豊かな歴史から、ビールの世界において特別な存在です。この記事では、その基本的な情報から、歴史的な背景、人気の理由、飲み方、製造過程、代表的な銘柄、ドイツのヴァイツェンとの違いに至るまでを詳しく紹介しました。

ベルジャンホワイトビールは、その爽やかな風味と多様性により、ビール愛好家の心をつかみます。特に夏には最適で、さまざまな料理との組み合わせが楽しめます。伝統的な製法とモダンなアプローチが組み合わさり、ユニークで魅力的なビール体験を提供しています。新しいビールの冒険を楽しむ際には、ぜひベルジャンホワイトビールをぜひ試してみてください。その多彩な風味と歴史的な背景に触れることで、ビールの新たな魅力を発見できると思います。

 

また、BEERTIFUL(ビアティフル)では、ベルジャンホワイトをテーマにしたアニメも制作しています。
アニメ終了後の解説でも紹介していますのでぜひご覧ください!🍺
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https://www.youtube.com/watch?v=w6c0eAy9wuI

投稿者プロフィール

BEERTIFUL
BEERTIFUL
ビールと共にある「美しいものや楽しいこと」で、あらゆる人の人生を豊かにするような世界を作ってくことを使命としてビールプロジェクトを行っています。
人生は一度きり。人と人の出会いは宝物であり、何かが始まる起点。ビールはその可能性を持っていると信じています。

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